採用応募する 電話する 募集要項
KINMAQブログ「未来を変えよう、理学療法士!」 BLOG

筋膜NEWS①筋膜とは?

筋膜とは?全身を包み込んでさまざまな臓器をつなぎ、
驚くべき影響力を発揮します。

目白大学  保健医療学部理学療法学科、大学院リハビリテーション学研究科准教授
小川 大輔

プロフィール
日本筋膜マニピュレーション協会代表理事。日本でいち早く筋膜マニピュレーション技術の研究に関わり、その技術の習得に邁進して、現在、筋膜マニピュレーション界で世界に40人、日本に2人と言われる「ティーチャー」の資格を有する。

 

「筋膜」というと、筋肉に関連するものという認識が広がり、誤解が生じている。

理学療法士なら、「筋膜」という言葉は聞いたことがあるでしょう。WHOが認めた最新の「臓器」なんですが、「筋」という文字が付いているばかりに、筋肉から派生する臓器との認識が広がっているようです。この誤解は、もともとこの臓器をファシア(Fasia)と呼んだ医学用語が適切に翻訳されなかったのが原因です。よって、近年では筋を意味する接頭辞マイオを付けてマイオファシアという風に言われたり、また、それに関連する筋膜マニピュレーションという技術にしても、最近ではファシャルマニピュレーション(FM)と呼ぶようにしています。

 

筋膜は筋肉だけではなくて、内臓や神経、骨まで全身を包む込み、多方面に影響する。

さて、その筋膜の正しい捉え方ですが、これは全身をボディスーツのように包み、筋肉だけでなく内臓にも骨や神経にも関わってネットワークを形成する組織なんですね。その種類には、浅筋膜、深筋膜、筋周膜、筋内膜があり、中でもファシャルマニピュレーションにとって重要なのが深筋膜で、それには腱膜筋膜と筋外膜があります。まず、腱膜筋膜はいろんな方向に走っている複数の筋線維群をまとめて包み、2枚、3枚と折り重なっています。一方、筋外膜は何々筋と呼ばれる一つひとつの筋肉を包んでいます。そして、これらは枝分かれして筋肉の中に入り込んで筋周膜になり、それがさらに枝分かれして筋内膜につながります。つまり、これらすべてがつながっているというわけです。

 

深筋膜が要。14本のラインで全身をくまなくつないで、筋肉で作った力を伝播させる。

この深筋膜の特徴の一つに、連続性があります。例えば、上腕の腱膜筋膜の一部は、肘をまたいで前腕の腱膜筋膜とくっつき、手の関節・手首の関節をまたいで手の方にもくっついていて、体幹や肩・首ともつながっている。つまり、隣接する身体分節の腱膜筋膜は関節をまたぎ、深筋膜そのものが全身をつないでいる。それはラインと呼ばれ、全身に14本のつながりがあるのです。ここが重要です。中でも、もっともベースとなるラインが6本あり、これは前面と後面に広がるライン、外側と内側に広がるライン、あるいは内旋と外旋に関わるラインです。そして、前かつ外側といった斜めの方向や中間の方向に対角線の動きを司るのが次の4本です。さらに、たとえば、パンチを出す時は肩は後ろに、肘は前に折れ曲がり…といったくるくると螺旋のような複雑な動きがあり、それに関わるラインが4本あって、合計14本になります。

 

筋張力の3割が深筋膜へ。その結果、一つの筋肉で発生した力が全身に影響する。

もう一つ、筋肉と骨との関係という別の観点から見てみましょう。古典的な解剖学では、筋肉が骨にくっついて骨を動かし運動を生み出しているので、この関節を動かすのはこの筋肉と特定していました。しかし、実は、筋肉から生じた張力は7割が骨に伝わり、残りの3割は深筋膜に伝わる。つまり、深筋膜には連続性があるので、その影響は特定の関節に留まらず全身に届くため、例えば太ももで作られた力が遠位の足の方まで伝わるのです。この結果、何が起こるかというと、たとえば腰の痛みは腰に起因するだけではなくて、実は足首や首周りの不調から来ているかもしれないのです。