筋膜NEWS③
イタリア本部のアジア担当、マルコ先生による
筋膜マニピュレーションの講義が開催予定です。
目白大学 保健医療学部理学療法学科、大学院リハビリテーション学研究科准教授
小川 大輔
プロフィール
日本筋膜マニピュレーション協会代表理事。日本でいち早く筋膜マニピュレーション技術の研究に関わり、その技術の習得に邁進して、現在、筋膜マニピュレーション界で世界に40人、日本に2人と言われる「ティーチャー」の資格を有する。
筋膜マニピュレーションは、1987年イタリアの理学療法士Luigi Steccoが開発しました。
以来、国際的評価は徐々に高まって、とくに2005年以降は数多くの論文・関連書籍が世界で発刊されるようになり、2007年10月、ハーバード大学医学大学院において第一回国際筋膜研究学術大会が開催されて氏が表彰され、2009年にはアムステルダム、2012年にはバンクーバーと続きました。そして、2017年3月時点ではすでに世界46ヶ国において技術講習会が開かれています。一方、日本でも2011年にStecco氏の長女で解剖医のCarla Stecco氏によるワークショップが開かれたのを皮切りに、2012年以降、認定コースが年に数回開催されており、2020年4月には、日本国内における筋膜マニピュレーションの普及を目指して、一般社団法人日本筋膜マニピュレーション協会が設立されました。
筋膜マニピュレーションと伝統的な東洋医学との結合が、いよいよ見えてきました。
筋膜のラインとポイントの位置や考え方が鍼灸の経路とツボに酷似している…このように、東洋医学いわゆる中国由来の鍼灸との類似性はずっと言われ続けてきました。つまり、イタリア本部のLuigi Steccoをはじめ、娘の医師Carla Steccoもいち早くそこに注目していて、Carla Steccoの所属するイタリア・パドバ大学の解剖学教室には早い時期から中国の留学生を招いていましたし、Carla自身も何度も中国を訪れたと言います。そして、ついに2017年、Luigi Steccoその人が中国を訪問することになりました。無類の飛行機嫌いの彼が、そこまで踏み切ったのは余程のことでもあったのでしょう。おかげで、その際には日本に寄ってくれて、半日の公演会も実現しました。
筋膜マニピュレーションの技術を継承する資格者育成に、焦点が当たっている。
2010年代には、このような筋膜マニピュレーションを取り巻く世界的な動きも広がり始めていたのですが、そこにコロナ禍が世界を襲い、すべての活動が一気にストップしてしまったのです。ただ、その間にも何とか世界への普及を目指して活動は続けられ、とくに筋膜マニピュレーションの技術を継承する資格者の育成に向けて、理論と実技を分けながらオンライン化を進めるなど本部も試行錯誤も繰り返しています。その認定資格ですが、本部が打ち出したのが2018年、筆頭にティーチャー、次にスペシャリストと続く体系になっていて、2022年時点でティーチャークラスが世界に40人弱、日本では私を入れて2人。スペシャリストは国内に30人くらいと、世界的にもかなり多い方です。というのも、イタリア以外でスペシャリスト認定試験を行っているのは日本だけなんですね。
コロナ禍によってストップした普及活動が、2023年、ついに動き始める。
さて、コロナ禍への対応が緩和される今、これらの活動が再開されようとしています。現在、アジア圏を担当しているマルコ先生というブラジル在住のティーチャーがいて、日本で育成コースを2012年に開始して以降、毎年来日して技術を教えてくれています。その方と連絡を続ける中、2022年8月、ついにビジネスビザが取れるようになり、来日が叶いました。その際には、M&メディカルリハにも視察に訪れ、日本での筋膜マニピュレーションの普及の現状を大変評価してくれたようです。そこで、2023年初頭には、全国の理学療法士を対象に技術指導のための大掛かりな講習会を開催しようという動きを見せています。